ミツバチが元気に巣作り

熊野の山でよく見かける丸い木の箱。「ゴーラ」と呼ばれるハチの巣箱です。色川でも、このゴーラを使ってミツバチを飼う人は多いです。小阪区の宮本惣次さん(83)もその一人。世界的にミツバチの減少が問題視され、熊野の養蜂家からも「ハチが少ない」という声が聞かれる中、宮本さん宅では7個のゴーラでニホンミツバチが巣を作り、元気に蜜を集めています。
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大工の宮本さんが養蜂を始めたのは13年前。仕事を頼まれたお宅で養蜂を見て、自分もやってみようと思い、ハチを分けてもらいました。スギの丸太をくりぬいてゴーラを作り、自分なりに工夫を重ねて増やしてきました。

春の分蜂(巣分かれ)の時期は、最も気を遣うそうです。女王バチが働きバチの一部とゴーラを一斉に出て新しい巣を作るのですが、その群れが、近くに設置しておいた宮本さん特製の木箱に入るように、水をかけたり、音を鳴らしたりして追い込みます。群れが入ったらふたをして、木箱を空のゴーラの下に置き、ハチを出してゴーラに移します。妻の勝代さんとの共同作業です。

「ハチがゴーラから出て行くタイミングを計るのが難しいの。経験なかったら、ついよそへ飛ばしたるよ。いつもは2回ぐらいやけど、今年は3回分かれた」

宮本さんは、えさとなる花の蜜にも気を配ります。ゴーラの周辺では、ツバキ、ウメ、クリ、菜の花、レンゲ、シイ、ミカン、茶など、さまざまな花が咲き、ハチが住みよい環境になっています。また、月に1回、ゴーラの中の掃除も欠かしません。

「アリが来るし、ツヅリ虫(ツヅリガの幼虫)がわいてきたら、ハチが巣を嫌って飛んでいってしまう。ゴーラの下を開けて、ごみをはき出してきれいにしとかなあかん」

宮本さんのゴーラは掃除しやすい作りに工夫されています。使っていないゴーラも、山に置きっぱなしにせず、腐らないよう掃除して大切に管理します。

「うまいこといかん年もあったけど、ほかの人の話聞いたり、いろいろ研究しもて骨折ってしやるよ」

ハチミツを取るのは7月末から8月ごろ。「今年は2つしか蜜取れんかな」と言いますが、ゴーラ2個で5升分の蜂蜜があるそうです。

「ここらの蜜は栄養ええさか、毎朝パンにつけて食べるよ」
宮本さん夫婦の元気の源のようです。
(執筆:たき)

ゴーラの中のハチの巣を見せてくれる宮本さん