万物への感謝を込めて、祈る

「お盆には、ご先祖様の霊とともに、有縁無縁たくさんの霊がやってきます。それらすべて、分け隔てなくお迎えしご供養するのが施餓鬼です」

8月12日、大泰寺住職の話で、熊瀬川区の施餓鬼が両谷庵で始まった。外に向かい祭壇をこしらえる。これが、その施餓鬼の考えを表しているそうだ。

熊瀬川区でとりわけ目を引くのが、その飾り付け。長い里芋の茎の上にそうめんを乗せた飾りが、中央に鎮座する。その下に、桃、柿、ゆり根。いつからの風習かわからないが、熊瀬川区では、昔からこの飾り付けを行っているそうだ。「これは、もう新舎昭さんしか、ようできん」と区長の山口直昭さん。

全体の供養の後、初盆の故人の供養が行われる。住職が帰ったあとは、寺役を中心に準備していたおまぜなど食事をいただき、ほっとひと息。子どもたちも加わり、会は賑やかになる。

その後、般若心経を唱え、御詠歌を参加者全員で唱える。音頭を取るのは、新舎さん。昔はすべて地声で歌ったそうだが、「一人で全部は、ようできん」と、今は音声を流し、新舎さんの声と共に、皆で歌う。

張りのある声が響き、皆しばし時間を忘れ、万物への感謝を祈っていた。