日本ミツバチと共に生きる講習会

春の風がさわやかに吹き抜ける4月5日、円満地公園と「色川明るい里山森づくりの会」の森(通称コロコロランド)にて、「はじめよう!ミツバチと森をつくる生活!」が開かれ、勝浦・新宮、遠くは三重県紀北町や山梨県からも参加者が集まった。

「ミツバチ」と聞くと真っ先においしい「蜂蜜」や「養蜂」が思い浮かぶが、今回のテーマは、ミツバチを「増やす」こと。奈良、大阪、兵庫、三重などの森で日本ミツバチを増やす「ビーフォレスト活動」に取り組む吉川浩さんが講師を務めた。

吉川さんは元々養蜂に携わっていた。日本ミツバチが自宅の奈良周辺で激減するのを目の当たりにし、洞のある巨木の伐採、植林の増加と年々進む山の荒廃と関係あるのではと考えるように。そこで、養蜂から一転、日本ミツバチの営巣場所を増やすため、巣箱を置ける森を求めて近畿各地を訪ね、先々で日本ミツバチの状況を話している。

「日本ミツバチは何千もの種類の木々や草花の受粉を担い、生物の多様性を根本から支えているのに研究者が少なく、激減の理由も分かっていない。日本ミツバチがいなくなれば生態系が崩れ、人間にも大きな影響が」と吉川さんは説明。その後、参加者は5つのグループに分かれて5組の巣箱を組み立てた。巣箱は蜜を採ることを目的とせず、ミツバチの緊急避難場所的意味合いの強い簡素な設計で、30分ほどで完成。

午後は、会場をコロコロランドに移して巣箱を設置。方角はもちろん、周囲の木の大きさ、どのくらい葉が茂るか、朝日や夕日の当たり方、鹿の通り道でないか、風が当たらないか、など蜂の気持ちになって想像しながら、一つ一つ慎重に場所を選ぶ。日本ミツバチは半径2キロほどを飛び回るそう。巣分かれのこの季節、新しい群れが巣箱に入居してくれることを期待しながら作業にあたった。

古座川や色川・太田周辺は、他府県に比べ日本ミツバチの減少はゆるやか。古くから自然と共存したゴーラでの養蜂が続いていることや、照葉樹の森が残されていることと関係あるかもしれない。山奥の不便なこの土地は、日本ミツバチにとって最後の楽園かもしれない。この楽園に私たちも共に暮らしていると思うと、豊かな気持ちになり、里山の営みが続くことを願わずにはいられない。