お米の無事収穫を願って 斎講

6月10日、小阪で斎講が行われた。南泉寺の戸が開け放たれると、ひんやりとした新鮮な空気が流れ込んだ。朝早くから寺役の住民が集まり、掃除やお供え物の準備にとりかかった。

お盆の上に擬宝珠(ギボウシ)の葉が並べられ、その上に小さなおにぎりが乗せられた。この小さなおにぎりは、斎講が終わったあと、田んぼを作っている人が持ち帰り、水の引き込み口にお供えされる。おにぎり以外に、お札を竹に挟んだもの、杉の皮でできたお札が同じ場所にお供えされる。斎講は、龍神様への水祈願と、虫追いの意味を兼ねたもの。田んぼで無事にお米がとれることを願うのだ。

小雨がぱらつく中、住民が集まり、住職も到着すると、いよいよ斎講が始まった。

「水害がないよう、そして適度に雨が降るよう、お祈りしましょう」

住職はにこやかに挨拶し、読経を始めた。読経の途中、住職から声がかかり、住民が一人ずつ焼香をあげていく。

読経が終わると、寺の向かいにある「ほうじの丘」に移動。丘の上には「大乗妙典一字一石塔」と刻まれた石塔があり、再びここでお参りをする。住職の読経の中、一人ひとり線香をあげ、お米を供え、石塔にしきみで水をふりかける。

石塔のすぐそばには松の木がある。今は枯れてしまったが、昔は大きく立派な木で、小阪の子どもたちはよくこの松に登って遊んだそうだ。

お参りを終え寺に戻ると、住職も交えて歓談の時間に。

無事にお米がとれること。それが、営まれてきた暮らしのなかで、いかに大切で切実なものであったか。思いを馳せつつ、今年も手間ひまをかけて育てられたお米が、無事収穫されることを願う。