田垣内の施餓鬼

連日の猛暑が続く中、色川の各地区でお盆の伝統行事「施餓鬼(せがき)」が行われた。

田垣内区の施餓鬼は8月12日に寶珠寺で行われた。「お盆には、ご先祖様の霊とともに、有縁無縁たくさんの霊がやってきます。それらすべて、分け隔てなくお迎えし、ご供養するのが施餓鬼です」と言う大泰寺の西山十海(とうみ)住職の話で始まり、住職が焼香棚、施餓鬼棚で焼香しお経を上げた後、住民がお経に合わせて、同様に焼香棚と施餓鬼棚にお参りする。

そして施餓鬼の後は、住職も一緒に皆で食事する。食事はおまぜ、漬物、天ぷら、煮物などで、前日と当日朝から用意したもの。住職が「食事がとても美味しい。食事をともにするのはありがたい」と言うように、区民が一堂に会して美味しい食事をとるといつも以上に会話が弾み、その光景にとても居心地の良さを感じる。

地元住民が多いお寺の行事では、昔の話に花が咲く。今は円満地公園で行われている色川の盆踊り。かつては境内で盆踊りが催され、皆集まってお酒を呑んで朝まで盆踊りをするのが唯一の楽しみだったと言う。「昔はテレビもないし、ほかに娯楽がなかった」と皆口々に語る。

施餓鬼をはじめ人々の営みに寄り添って受け継がれてきた伝統行事、その中に地域らしさが垣間見られるのではないだろうか。競争で勝ち抜く社会やお金と交換するサービスよりも、ともに助け合い「いつもおおきによ」と声を掛け合う暮らしのほうに、どれだけ価値があることだろう。