ササユリが見頃 不動坂

 「うちとこのササユリが、今ちょうど咲いとるんやだ。」とある会合の休憩時間、浦勝良さんからお声がかかった。数日前、坂足の後呂光さん宅に寄った時も、甘い香り香りを漂わせ一面に咲くササユリを見学させていただいた。不動坂のササユリも見逃すまいと、翌日の6月20日、早速お邪魔することにした。

 道端でたまにポツン、と咲いているササユリ。かつてはあちこちで咲いているものだったが、鹿猪が百合根を食べてしまうため、数が減ってしまった。後呂さんや浦さんのところでは、獣の対策を施してササユリを育成している。

 みなみのフィールズ不動坂に到着すると、玄関までのアプローチに、白、ピンクのササユリが、かわいらしく並んで咲いている。もともと2、3本植えておいたものが種を飛ばし、少しずつ増えて行ったそう。木の根元、ブロックの隙間などよく見てみると、そこに根をはった小さな笹が生えていた。種から芽が出て花がつくまで7年かかるとのこと。

 母屋の裏には、たくさんのササユリ。花がふわふわと風に揺れていた。

 もともと杉が植えられていたところを12年ほど前に伐採。以来、少しずつササユリが自生して数を増やし、今の光景になったというからすごい。夕方になるといい香りがするそう。

 石垣には、紀伊半島南部の固有種「キイジョウロウホトトギス(紀伊上臈杜鵑)」が葉を茂らせている。秋に花が咲くこの植物は、日陰を好むため、これからの季節は寒冷紗をかけるそう。

 「私はもともとはそんなに花に興味なかったんやけど、色川に来て、花木園芸組合に入れてもらってから、だんだんと花への興味が湧いてきた。季節の花を見るのはいいものですね」と浦さん。

 花の前でちょっと立ち止まる。その季節だけの花の色、香りを感じる。不動坂での植物鑑賞は、夏に向かって慌ただしくなる中で、日常のちょっと外へ連れて行ってくれた。