9月12日、休日の朝9時。口色川区の住民が、に集まった。中山間地域等直接支払制度の取り組みで、に猿檻を設置するためだ。前号の大野編に引き続き、今号では、口色川区の同制度への取り組みを取材した。
同区には、10年程前に設置した猿檻が既ににある。しかし、現在、区内を行動する群の活動エリアは太田川より西側が中心。川より東側のこの檻では対処しにくい。「必要になった時にすぐに使えるように」と口色川区実行組合長の平田幸夫さんは西側の檻を提案した。東の檻は設置当初の稼働後、しばらく休止期間があった。しかし、被害が増加したときに再活躍し、捕獲後5年は猿被害が起きなかったという経験もある。
この日は主に、運搬と仮設置。約3m×7mの檻の資材を、集まった5名が徒歩で何往復もして運んだ。その後、猿の通り道と想定される栗の木の下に檻を組み立て、1日がかりで大方の設置を終えた。その後、事前に鳥獣害対策専従地域おこし協力隊らが設置した監視カメラを稼働し、餌をかけた。肝心なのはこの後の丁寧な管理だそうで、餌付けと観察が続けられる。この作業を積極的に担える存在が今後の課題だ。
他にも同制度で、田畑に隣接する樹木の伐採等による対策も実施。それら一連の取り組みを日誌と写真で記録し、役場に報告する作業もあり、平田さんが担う。
10月末現在、今年の被害は想定されていたよりも少なく、捕獲もまだだ。被害が少なかった事は何よりだが、猿が里に降りてくる環境がある限り、対策は必須だ。東側の檻の近くで農業をしてきた福田晋也さんは「個人で獣害に向かっていた頃は、夜に見回りをしたり、闇雲に柵を補強したり‥。対応で仕事も進まず、畑で途方に暮れていた。専従の人材に相談できるようになり、専門的な提案をされ、区で電気柵等の設置をしてから、本当に安心できるようになった。」と感謝を語ってくれた。本業と並行しての個人対策では限界があるのが現実のようだ。 色川での猿対策は、鳥獣害対策協議会による追い払い活動や、個人や各区による果樹管理や電柵設置がある。更に今回の檻設置のような大掛かりな取り組みに制度を活用する事で、対策が複合的になる。その結果、それぞれの対策が功を奏し、集落が守られているようだ。