ケヤキの大木の伐採

10月4日、口色川区の杉本神社境内にある大きなケヤキの木が伐採された。この木は樹齢350年以上のもので、同区の宝泰寺の山門等とともに、昭和60年に町指定文化財に指定されていた。

しかし、老齢のため5、6年前から枝が落ちるようになり、危険だった。当時、区で役員会を開き、通行止めの看板を設置。その後、町の指定から外してもらう手続きを行い、今年いよいよよ伐採することになった。

伐採の前日は宮司さんによってお祓いが執り行われた。

当日、未明に福井から、伐採の職人一行が到着。午前7時ごろから本格的な伐採が始まった。

伐採は一番上の枝から始まった。枝といっても、1本が普通の木のような大きさだ。休憩をはさみながら作業は進められ、だんだんと枝がなくなり、幹だけになった。幹はかなり太く、チェーンソーでぐるりと一周するのに時間がかかっていた。

職人たちの慣れたチームプレーで、どんどん伐採が進み、当日の夕方までにすべての作業が終了。ケヤキは、岐阜の市場に出荷されるため、大きなトラックで運ばれていった。近隣住民も朝から夕方まで、大木の伐採を見届けた。

神社のすぐ近くで生まれ育った新宅正士さんは、「昔から木はあのくらいの大きさであったように思う。お宮の広場で、野球をしたり、映画の上映を見に行った」と語った。

同じく近くに住む植野畑加代子さんは、「木が枯れてきて、枝が大きいので、強い風が吹いた時に倒れてきたら怖いと思っていた。昔、久保凡平先生(当時色川中学校の教頭先生)が毎月1日にお参りしてた。昔は参拝した人、たくさんいたね」と話した。

ケヤキの伐採の話を進めた元区長の新宅伸一さんは、「あのケヤキは銘木といわれる木。50年ほど前、お宮のクスノキを売ったことがあった。その時にこのケヤキも売ろうと話が出たが、明治生まれの人が『あの木だけは』と言って売らなかった。昔は、8月は盆踊り、9月1日は宮祭り、2月1日は厄払いと、お宮さんは年3回村の人たちが集まる場所だった。そこに何百年も立っているケヤキがなくなるのは寂しい」と語った。

地元の人たちの話を聞きながら、ケヤキの周りにあった風景に想像を巡らせた。