伝統の施餓鬼行事

小阪区の南泉寺で8月11日、施餓鬼が行われました。–pagebreak–

施餓鬼に出席できないご近所さんから、「ダイコン旗」を持ってきてくれと頼まれました。30cmほどに切った篠竹に赤青黄緑白、五色の和紙をたなびかせた「ダイコン旗」と呼ばれる施餓鬼旗は、畑に立てる虫除けのおまじない。今や田畑の最大の敵は鹿と猪。獣にも効く旗を作ってほしいところです。

祭壇には「三界万霊十方至聖」という文字の旗が揺れています。古い仏様、初盆の仏様への供養だけでなく、地獄、天国、そしてこの世、あらゆる世界に生くるものたちへ施しを与えることにより、ご先祖さまたちとつながりを確認し合い、また、村民同士の絆を深める一日なのでしょう。1時間近く続けられる念仏と鉦(かね)の音が異界とも異時代ともつかぬ時空にいざなってくれます。

かつて施餓鬼の終わった夜は、境内で盆踊りが催されたそうです。今は円満地公園のみとなった色川の盆踊り。昔は各集落や妙法山で行われる盆踊りに、浴衣に下駄、おしゃれして繰り出すのが唯一の楽しみだったといいます。暗闇の帰り道を怖がる少女、手を引いてやる男の子。たくさんの恋が生まれたそう。そして一緒になり、子どもをこしらえる。こうして村は連綿と続いてきたのでしょう。

「昔はテレビもゲームもないし、ほかに娯楽なんぞなかったからの」とみな口々に語ります。ですが、与えられた娯楽、金と交換する娯楽よりも、自分たちで生み出す娯楽のほうがどれだけ価値のあることでしょう。
(執筆:日央子)

施餓鬼棚

念仏を唱える住民たち