口色川の坂本ミトエさんは、12月になるとこんにゃくを作る。
原料のこんにゃく芋は、家の近くの茶畑に植えてある。こんにゃく芋は大きくなるまでに2~3年かかるため、芋が取れなければ、こんにゃくは作れない。しかも「イノシシに掘られてしもて、ないようになってくよ」とミトエさんは言う。
育ったこんにゃく芋を収穫できるのは秋。ミトエさんのこんにゃく作りも11月から始まる。
11月の天気の良い日、茶畑に芋を掘りに行く。茶の木の下の奥深くに植わっているので、掘り出すのも一苦労だ。今年は大小5個ほどの芋を収穫。ミトエさんはそれらを1カ月ほど干しておく。
そして12月16日午後、まずは芋を炊く。大きい芋は適当に小さく切り、小さい芋はそのまま、水から羽釜でぐつぐつと、沸かしすぎないように気を付けてじっくりと火にかける。
くどに薪を足しながら、芋がやわらかくなるまで煮続ける。芋の良いにおいが漂ってくる。
翌朝、芋の皮をむいて、手で小さくちぎり、ミキサーにお湯と一緒に入れてすりつぶす。
どろどろになったら大きなボールにあけて手でこねる。
ミキサーのおかげですりつぶす作業は昔よりも楽になったそうだが、手でこねるのもなかなかの重労働だ。粘りが出て固くなってきたら、灰汁を加えてさらに練る。
灰汁も事前の準備が必要だ。草木灰に熱湯を混ぜてしばらく置き、上澄み液をこす。この灰汁が、こんにゃく芋のえぐみを中和して取り除き、こんにゃくを固める。
練り続けてこんにゃくが固まってきたら専用の木型に入れてならし、切り分けて熱湯に入れてゆでる。
30分以上ゆでて固まってきたら水にさらして完成だ。
できたてのこんにゃくをミトエさんと試食。ぷるぷるしていて、口に入れるととろけるようだ。市販のこんにゃくとはまったく違うこのおいしさ。手間暇かけたからこそ味わえる最高のぜいたくだ。