昔ながらの寒餅作りと節分行事

小寒から立春の前日(節分)までは、1年で最も寒いとされる「寒」の時期。昔から、寒中の水は清浄で腐りにくいといわれ、「寒の水」をくんで保管しておいたり、この水を使って「寒餅」やみそ、しょうゆなどを作る風習があります。寒餅を食べると、1年間、健康で過ごせるともいわれます。
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色川では、昔に比べると減ったようですが、今でも節分までに寒餅をつく家庭があります。白、小豆、ヨモギ、サツマイモなど、色とりどりの餅を作り、仏前や神棚、倉など、家の隅々に供えます。

また、節分には、家庭によってやり方はさまざまですが、豆まきなど鬼を払う行事が行われます。前日に山で「鬼の目つき」と呼ばれる木の枝を取ってきたり、「鬼石」と呼ばれる小石を近くの川へ拾いに行き、洗って乾かしておきます。「鬼の目つき」はヒイラギがよく使われますが、色川ではメギ科の植物が多く用いられます。「鬼石」は大豆と一緒にまいたり、玄関先に置いて悪い鬼を追い払うために用意されます。

そして節分当日には、玄関先に榊(さかき)を立て、「鬼石」を飾り付け、「鬼の目つき」はサンマやイワシの頭や尾と一緒に割り箸や小枝に付け、玄関の戸口や戸袋へ挿しておきます。

夜になると、かんぴょう、キュウリ、卵などが入った巻き寿司を家族全員でいただいた後、豆を自分の歳の数だけ食べます。残りの豆は「鬼石」と混ぜて枡に入れ、いざ豆まきへ。

今回、お邪魔した家庭では、喧々諤々の論議の結果、家族の末っ子と、新参者の筆者が鬼役をすることになりましたが、やはり追われる立場というのはあまり心地よいものではありません。

色川では昔は、旧正月が節分より先にあると、枡に豆を入れて、まかずに家の中を回り、節分より後にあると「鬼は外、福は内」と豆をまいていたそうです。今では旧暦を気にすることは少なくなりましたが、あらゆる動植物と旧暦の月齢は意味があるものではないでしょうか。こうした昔ながらの風習を、もう一度見直してみることを、春の訪れが教えてくれました。
(執筆:ざっきー)

「鬼石」を川で探します

玄関に飾られた「鬼の目つき」とサンマ