8月12日、ご先祖様に見守られた晴天の下、熊瀬川区両谷庵で施餓鬼が行われた。
今年も色川各区で行われた施餓鬼。先祖供養とともに、飢えや喉の渇きに苦しむ餓鬼に食べ物などの施しを与える仏教行事だ。「三界萬霊」、あらゆるすべての霊魂を供養して祈る施餓鬼には心の温まる意味がある。
熊瀬川区は現在5世帯と人が少ないが、熊瀬川区出身の人々が定期的に通い、熊瀬川区を支えている。当日も色川内外から15人ほどが集まった。熊瀬川区の施餓鬼の準備はみんなで行う。休憩には区長の山口直昭さんから畑でとれたスイカが振る舞われ、作業で汗をかいた身体に沁み渡った。
午前10時になると大泰寺の住職が来訪し、法会が行われた。住職がお供え物について「そうめんを立てるのとなすを菜っ葉で包むのは珍しい。熊瀬川区だけなのではないか」と話すと「何かしらの意味があるんだろうな、これは守っていかなければならんなー」と住民は口をそろえた。その後、住職から施餓鬼の説明があり読経が始まった。住民は目を閉じて熊瀬川区を支えてきたご先祖を思い浮かべているようだった。途中で住職から声がかかり、住民は列になって焼香をあげ、「三界萬霊」に米となすを供え、しきみの葉で水を振りかけた。 法会が終わると、机を囲んで寿司弁当をいただいた。両国庵に飾られた昔の稲刈りの様子描いた版画を見て子ども時代の話に花が咲く。「ここの3人は同級生だったんだ」と話が弾んだ。親戚同士のつながりもあり、一体感のある熊瀬川区。家族のような温かい雰囲気が場を包んだ。熊瀬川区の施餓鬼は色川内外から住民が一堂に会する数少ない大切な行事。家族のようにみんなでつくり上げる温かい時間が美しい熊瀬川のふるさとでこれからも続いてほしい。