小阪の鉱山跡を探索

三重県尾鷲市在住の郷土史研究家が、4月13日に小阪区を訪問し、鉱山跡を調査しました。–pagebreak–

訪問したのは、熊野地域でエコツアーの企画・ガイドをする「くまの体験企画」の内山裕紀子さん、長野明宏さん、福田晃久さん。主に鉱山、隧道(ずいどう)、索道など近世の産業遺産とそれに付随する民俗史を研究しています。

これまでにも色川で調査を行ったことがある内山さんは、小阪の南泉寺にある石造物が鉱山に関係しているのではと推測し、今回、その手がかりがないかと鉱山の跡地を訪ねることになりました。

当初、地図に記された鉱山跡を自分たちで探す予定でしたが、杉桧が林立して鉱山跡が分かりにくくなっていたため、坑口の場所に詳しい住民の宮本惣次さん(84)・勝代さん(77)ご夫妻を訪問。事情を説明すると、惣次さんは「(石造物)は子どものころから寺にあり、いわれは聞いたことがないので、分かったら教えてほしいし、若い世代にも伝えていかなければ」と語りました。

その後、勝代さんの案内で、6つの坑口の跡を見て回りました。山の中、道なき道を先導しながら難なく歩く勝代さん。「山仕事でこんな道よう歩いたからね」と疲れた様子もありません。坑口はふさがっていましたが確認することができ、トロッコやレールの跡なども見られました。

また、最後に訪れた「平谷」と呼ばれる場所では、樹木が生い茂り、昭和30年前後は200人以上が働いていたという鉱山の面影はうかがえませんでしたが、勝代さんは「ここが選鉱場やったよ」「ここに映画館があって、見に来たよ」「ここには社宅が何十軒って並んでいたよ」と、広い敷地を案内し、「配給所(スーパー)には何でも売りやったよ」「鉱山の運動会にも行ったよ」などと思い出話も聞かせてくれました。

内山さんは「今回は石造物の手がかりは見つからなかったが、とても興味深い場所なので、またじっくり見に来たいし、実際に働いていた方のお話も聞きたい」とさらに関心が高まった様子。また、福田さんは「貴重な産業遺産の一つ。整備すれば見学ツアーもできるのでは」と提案しています。
(執筆:たき)

宮本勝代さん(左)の案内で坑口を見学する内山さんたち

昔、映画館があった場所