手作りの人形劇と市でにぎわう

 12月5日、真っ青な空の下、口色川会館の広場では小さな子どもから70代後半まで60人ほどの笑顔が咲いていた。この日「色川いろのわ市」が催され、色川の住民のユニークなお店9店舗が集まった。手仕事作品の販売、揚げ銀杏、焼き餅、色川の野菜や素材が楽しめるおやつや昼食、子どもの遊びスペースなどが並び、来場者は出店者と交流を楽しんでいた。

午後からは会館の大広間で人形劇「しろまるさんのおとぎよみ~メイティア・流れ星の種まき歌」が上演された。しろまるさんは北海道在住の夫婦のアートユニットで、毎年北から南へ旅をしながら公演を重ねている。4年目の旅公演で、和歌山での上演は今年初。三重公演を主催を2年間務める色川出身の奥田麻子さんから色川での開催の打診があり実現に至った。

しろまるさんの舞台は、子ども向けの所謂人形劇とは大分様子が違っている。物語の脚本に始まり、人形やその衣装、音楽、更に楽器まで全て丁寧に手作りされている。暗幕を張った真っ暗な会場に、影絵の手法も取り入れた光と陰、そして音が織りなす神秘的な世界が浮かび上がった。不思議な仕掛けや登場人物が次々と現れ、小さな子ども達も飽きることなく70分の上演を最前列で食い入るように見つめていた。時に人形や小道具に手を伸ばす無邪気な子ども達。上演後、しろまるさんは「子ども達のありのままの素直な反応に感動しました。来年は上演前から色川に滞在し、影絵のワークショップなどを通して子ども達とより深く交流してみたい。」と話していた。

  物語のテーマが「種まき」という少し難しいテーマだったが、子どもから大人まで観客の胸にも、色川を訪れたしろまるさんの胸にも何かしらの「種」が「蒔かれた」のではないだろうか。会場と演じ手が一体となった舞台芸術に触れ、人の温かさに触れ、冬至に向かう参加者の心が少しでも温まるイベントとなったなら主催者としてこれ以上嬉しいことはない。