山を手入れし、水問題に取り組む

「昔は水ようけあったのに、少なくなった」

各地区でこんな声を聞くことがある。

口色川区では昨年夏、縣にある小谷の水が干上がった。「こんなこと、今まで生きてきて初めて」と近くに住む久保惠資さんは言う。この時、飲み水も危ないと、住民たちで水の取り口を上流へ運んだことは、本紙でも紹介した。

「水問題の原因は、山林の問題が一番大きい。惠資さんがよく、『山に力ないようになった』と言う。田畑の山林化と、その手入れ不足が原因だ」と新宅伸一さん。

かつて棚田だったところに、現在杉桧が植えられている。この手入れをせずにいると、木が茂って暗くなり、下草が生えず、雨が直接地面にあたって、土が流れてしまう。そうすると、雨ですぐに水が濁ったり、土砂災害の原因になったりもする。

間伐をしても、木や枝を横にして寝かせておくなどの手間も必要だ。枝や木は再び土に還る。また、寝かせた木が土が流れ出るのを食い止める役割もある。

かつて色川には約150町も田畑があったが、今は30~40町くらいではないかという。田畑は水が溜まり、水を吸ってくれる機能もある。しかし今はその多くが植林になっている。

口色川区では、水問題を少しでも解決しようとする動きが始まった。口色川区所有の山林(船見峠から下、仙人滝にかけて)、約20町の間伐の計画だ。

その中には個人所有の山林もある。現在、持ち主や土地の境界がわからない部分もあるため、新宅さんは久保さんに聞きながら、土地の所有者らに声をかけ、現在確認をしているところだ。間伐の費用は補助金を活用、個人負担も少しある。

「すべてはできないが、自分たちでできる範囲のことをやっていく。他の区でもそんな動きになっていけば」と新宅さん。

久保さんは「仙人滝の上から下にかけても、今度間伐してほしいと考えている」。水元があり、そこに山が崩れてこないようにするためだそうだ。 水の問題は、鉱山や、紀伊半島大水害の時の影響もあると言われる。獣害、耕作放棄地、空き家など、さまざまな取り組むべき問題はあるが、この水問題も、暮らしに直結する非常に大きな問題だと感じた。