色川で育った子牛がセリへ

ほたる

「ドナドナドーナドーナー子牛を乗せてー♪」

2月17日、まだ陽が昇らないうちに軽トラックに載せられているのは、色川の大自然の中でのびのびと成長した「ほたる」。母牛「ゆり」が昨年6月に出産した。この日行われる、熊野牛産地化推進協議会による子牛市場の会場に向かうのだ。生後8カ月の「ほたる」はいやいやながらも荷台に乗りいざ出発!

目的地は田辺市、片道約3時間の道のりだ。ほたるにとって初めての遠出、そして母牛や仲間の牛たちとの別れ…。荷台では車が揺れるごとに足で一生懸命にバランスを取り、こちらを時々見るたびに「早く降ろしてくれー」と訴えているかのようだ。

午前9時ごろ無事会場に到着。そこには67頭の牛たちが勢ぞろい。ほたるも体重測定をしてから順番に並ぶ。そして購買者たちが一頭一頭品定め。ほたるのところに来ると一言。「小さいなー」。……それはさて置き、午前11時、いよいよセリが始まった。

セリは機械を使って行われる。出荷者とその牛を買いたい人がボタンを押すと、正面の電光掲示板に値段が表示され最後までボタンを押し続けた人が競り落とすという仕組みだ。最初は順調に進んでいたが、残り半分というところでハプニング!!なんとその機械が壊れてしまったらしい。どうやら配線に問題があったようで使えなくなってしまった。1時間ほどもめたりはしたが、なんとか再開。しかし機械は使えないので、ボタンの代わりに番号札を持ち、掲示板の代わりに一人が口頭で威勢よく値段を吊り上げ、最後まで札を挙げていた人が競り落とす「手せり」という昔の方式でやることに。

そして、ついにほたるの出番。2、3人が札を挙げてくれて、平均価格を下回ったもののいい値でセリ落とされ一安心。牛たちは競り落とした購買者の車に次々と載せられ、無事にセリが終わった。

ほたるが熊野牛として店頭に並ぶのはまだまだ先だが、食べてくれる人にはありがたみを持っておいしく食べてくれることを願いたい。

セリ会場