新たな出会いと共に  棚田の田植え体験

「無農薬でお米を作れるところを探しているんです」

5月20日、棚田を守ろう会(松木繁明会長)が毎年開催している「田植え牛耕体験イベント」に今年初めて参加した人が、こんな相談をスタッフにしていた。この人は実は今、那智勝浦町に住んでいるそうだが、無農薬で米づくりをしている人が周りにおらず、近くで移住先を探しているそうだ。

他にも新しくスタッフとして関わり始めた人やその友人、色川に移住を考えている夫婦など、イベントが新たな出会いの場になっていた。子どもたちの参加も多く、イベント自体がとてもいい雰囲気に包まれていたように思う。

スタッフを合わせて30人ほどが作業にあたり、昼までにほぼ田植えは終了。食事係が丹精込めて作ってくれた昼食を食べた後は、こちらも恒例になりつつある「牛耕体験」の時間に。大野から原洋平さんがトラックで連れてきた牛が、黙々と田を耕していく。昔の風景に思いを馳せながら、その迫力ある光景に参加者は目を輝かせていた。

イベントはいわば「ハレ」の日。棚田を守るにちにちの作業の大変さまで伝えることは難しいかもしれない。だが、色川の空気感やそこで暮らす人々と触れ合うことができるのは、間違いなくイベントの醍醐味であり、そこから始まることもある。当日はスタッフが作業をレクチャーしながら、色川で暮らすこと、棚田を作ること、それぞれの考え方などを話しながら交流を深めていた。

小さな出会いをないがしろにせず、色川のファンを増やすきっかけに、そして、やがては芽が出て移り住む選択へとつながっていったら素敵なことだと思う。