富士山最遠望に挑む パート2

11月某日、再挑戦の日は突然に、出発2日前に決定した。期待も不安も感じる間もなく、問答無用で決行日はやってきた。–pagebreak–

聞くところによると、今年1月の初回トライ時は、気温氷点下のもと、夜明け前の暗いうちから、山を上ること30分、結果は無残にも富士山は見えず惨敗。それを聞かされた初回トライを知らないメンバーの一人は、中学校以来封印していた、仮病を考えたほどだった。

今回はそれほど寒さも感じず、晴天ではあったが、少し空気が湿っている感じがした。前回の場所は、現在不通となっているため、今回は妙法山の山腹にある「富士見台」を目指し、朝5時過ぎに那智高原公園を出発した。

富士見台から富士山までの直線距離は、322.6キロとのこと。山深い色川で富士山を見るためには、見る側と富士山側、そしてその間の地域の気象が合致しないといけない。今日はどうだろう?そんなことを思いながら山道を歩くこと約30分、登るにつれ、汗ばむほど体が温まってきた。そして予定通り、夜明け前に富士見台に到着した。

まだ薄暗い中、何も根拠はないが、「富士山は見える」という確信のもと、富士山の方向を見渡した。どちらの方角だろう?しばらくしてメンバーの中から、「あれが富士山とちゃうか?!」という声が聞こえる。メンバーが代わる代わる双眼鏡をのぞく。なるほど富士山の頂上部のような、ぼやけてはいたがきれいな円錐形状が見えるような気がした。

富士山が見えたと納得し高揚した者、また少し疑問符が頭の周りに浮かんでいる者、メンバーの表情はさまざまであった。いろいろ論議があったが、ひとまず見えたという結論のもと、日も出てきたので、下山することとなった。

天気もよく、富士山も見えたという充実感と達成感、早朝のすがすがしい空気を胸いっぱいに吸い込み、気持ちよく下山していた。下山途中に、妙法山からしばしば富士山を見ている、“富士見のエキスパート”O氏と出くわした。

メンバーの一人が声高らかに、「富士山見えたぞ?」。そして得意気に、撮ったばかりの写真を見せた。写真を見たO氏は瞬時に、根拠ある確信のもと、「これ富士山と違うよ」。非常に優しい口調と、はにかむような笑顔でおっしゃった。笑顔が朝日でまぶしかった。結局今回も結果は惨敗、という事実を突きつけられた瞬間であった。「山梨行ったらすぐ見れるぞ」。落胆する我々に心温まる言葉を頂戴した瞬間でもあった。

最遠の地から見る、色川から見る富士の峰だからこそ値打ちがある。ところで、日本にはよいことわざがあります。「三度目の正直」、乞うご期待を。(のーやん)