
田植えも無事に終わり、ほっとひと段落する人も多い6月10日、小阪区で斎講(ときこう)が行われた。
午前9時前には、20人以上の住民が南泉寺に集合。それぞれがお参りを済ませた後、住職の読経が始まった。このとき読む経は4種類あるそうで、すべてはわからないが、般若心経を柱に、行事の目的である龍神に対する雨の祈祷や作物に虫がつかないよう、虫追いの祈祷などが含まれるようだ。
昔から田んぼや畑と人々の生活は切っても切り離せないもの。斎講においても、五穀豊穣や雨の恵みへの祈りが、行事の根底にあることがわかる。
読経が始まりほどなくすると、住職の声がかかり住民が一人ずつ列になって順に焼香をあげていく。住民の皆さんは、思い思いに焼香をしたあと、祈りをささげていた。
一通り読経が終わった後は、南泉寺の向かいにある通称「ほうじの丘」に移動。歴代の住職のお墓にお参りする。ここでも、住職の読経のなか、一人ひとり米と線香を供え、しきみで墓に水をふりかけてお参りをする。
当日は、からりとした晴天になり、日に当たれば汗ばむほど。屋外での祈祷にはもってこいの陽気だった。
寺行事はどれも、寺役の果たす役割が大きい。斎講では、特にお札や住職が文字を書くための杉皮の準備などがあり、寺役を中心に住民が準備から片付けまでを行っていく。初めて見る人間にとっては、どれも新鮮でわからないことも多いが、その行事の進め方や所作一つひとつにあらわれる「つつがなさ」に、これまで続いてきた歴史の流れを感じる。区民が一堂に会し一心に祈る「場」には、時代を超えたとても大切な時間が流れているように思う。
