小阪で亥の子祭り

「こんばんは~亥の子祝います!」
満点の星空の下、8人の集団が庭先で威勢よくあいさつし、枝葉のついた竹を地面につきながら、亥の子の祝い歌を歌い始めました。
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「祝い めでたのョ・・・ 若の松さまは ソラ 若の松さまは 枝も栄えて ノホホイ ホイ ソラ 葉もしげる オモシロヤ・・・」

百姓の神様をまつる亥の子祭りは、亥の月である旧歴10月の最初の亥の日に行われます。今年は11月9日。昔は色川の各集落で、この亥の子つきの行事が行われていたそうですが、今は小阪区にのみ残っています。

1軒1軒回って、地面をつきながら歌を歌い、無病息災・子孫繁栄を祈ります。歌い終わると、家主から酒や亥の子もち、祝儀をいただきます。また、百姓の家では、もちにゆで小豆を載せて、菊の花と一緒に納屋や農機具に供えるといいます。

小阪区では今年は、小阪出身の60歳前後の“若手”で組織された「美里会」が亥の子祭りを主催し、大野や口色川、田垣内の青年も参加。総勢17人が2つのグループに分かれ、一つは集落の上のほうの家から、もう一つは下のほうの家から、午後6時ごろに回り始めました。

11月上旬でも夜はかなり冷え込みますが、皆で大声で歌い、歌い終われば酒をいただき、次の家へと歩いて回っていると、気分は高揚し、寒さなど忘れてしまいます。住人も出てきて一緒に歌ったり、昔話を聞かせてくれたりします。

「昔はもっと大勢で、にぎやかやった」
「一晩中、歌って回った」
「ほかに娯楽がないから、楽しみやった」

11番まである祝い歌は、独特の節回しで、初めて参加した若者たちは「難しい」と戸惑いながらも、自己流で声を張り上げ、心から楽しんだ様子。各グループは約2時間半で15軒ほどを回り、ゴールの集会所で、最後に全員でついて歌いました。

人が減り、高齢化する小阪区でも、存続が危ぶまれている亥の子祭り。尾林康夫・小阪区長や美里会の松木繁明・副会長は、「去年、『今年が最後』といわれていた亥の子を、皆さんのおかげで今年も続けることができて、本当にありがたい。これからも何とか守り続けていきたい」と話します。

集落の姿や人が移り変わっても、100年前にこの同じ星空の下で響いた亥の子の歌が、100年後も聞こえてくる村であってほしいです。
(執筆:たき)

飾りをつけた竹を地面につきます。奥さんのいる家では、奥さんをほめる歌を歌います

最後に集会所で皆でついて祝いました