薪で沸かす五右衛門風呂を体験

体の芯まで温まる。出た後いつまでも温かい。そう言われる五右衛門風呂。時代の流れの中でほとんど見られなくなりました。–pagebreak–

薪の確保はなかなかの重労働なので、ここ色川でも減ってきているのが事実です。今回はそんな五右衛門風呂を体験しようということになりました。

「風呂入らせて・・・」という突然のお願いに、「エエけど・・・なに?」と驚きを隠せないのは、色川にIターンして9年になる矢守祐介さん。矢守一家が暮らす古民家は、五右衛門風呂が現役で活躍しており、薪の確保は祐介さんの大切な仕事ですが、「いや、太陽熱の温水器が付いてるから夏場はそんなに薪使わへんし・・・」と特別苦労と感じている様子はなく、むしろ、不自由を楽しんでいるようにも見えます。

薪で風呂を沸かし、いざ風呂釜へ。しかし、思い切って「ザブン!」というわけにはいかず、そろりと底板に乗って沈んでいく感じです。無事底まで沈んでから、「入ってみると案外広いな」と釜に背をもたせかけると、「うあっちっ!」と叫ぶハメになり、案外デリケートな自分の背中を恨みました・・・。

しばらくは釜の中で、行儀よく体育座りをするしかなく、「釜に触れてはならない!」という緊張感で、お風呂でリラックスというわけにはいきませんでしたが、そのうち体も慣れてきて、釜に触れても平気になってきました。そうなるとこっちのもので、足を投げ出したりしながら、丸いお風呂を堪能しました。

矢守家の子どもたちもこの“丸いお風呂”が大好きで、神戸の実家に帰省したときは“四角いお風呂”で泣いたこともあったそう。

現代はガスや灯油、あるいは電気で沸かす風呂が主流ですが、太陽光や薪の炎といった自然の力で体を温め、風呂上がりにはビールを片手に表に出ると蛍が見える・・・体も心も温まるそんな最高のお風呂が、色川にはまだ残されています。
(執筆:とばやん)

丸いお風呂が大好きな矢守家の子どもたち