小阪の花祭り

4月8日、気持ちの良い朝。
いつもは締め切っている小阪の南泉寺に、ぽつりぽつりと住民がやってくる。
花祭りだ。–pagebreak–

この寺には、住職がいない。
準備するのは、順繰りに回ってくる寺役を担当する人たち。
前日、寺を掃除し、団子と呼ばれる小さくてまん丸のおはぎを作り、甘茶を沸かす。
いっしょに団子を作るものの、器用さの必要な作業ってムズカシイ。
あんこがすっきりまとまらないで、どんどん肥大化してゆく。

花御堂(はなみどう)に色とりどりの花をくっつけていく。
れんげ、水仙、桜、パンジー、つつじ、菜の花…
いっしょに飾り立てるものの、センスの必要な作業ってムズカシイ。
進むにつれ、どんどん大雑把になっていく。
花祭り当日には花が萎れてしまうのでは、とみんなで心配しながらお花をぺたぺた。

「お釈迦さんにおめでとう言うたかー、今日はお釈迦さんの誕生日やで」

寺にきたおばちゃんたちは団子をほおばりながら、甘茶に関するエピソードを語ってくれた。

「水の代わりに甘茶で摺った墨で字を書くと字がうまなる言うてな、学校に持って行ったもんよ」

「家の周りに甘茶まくと、ムカデが来んようなるゆうで」と、甘茶を少しばかり持って帰る人も。

寺の敷地で、甘茶の木を育てている。
鹿に食べられてばかりで、なかなか大きく育たず、対策として格子の柵で保護された。
冬には、この柵にカモシカが顔を突っ込んで抜けなくなるという事件が起きた。
いまは市販の甘茶を使っているけれど、いつか自分たちの甘茶で煎じた花祭りが迎えられることを、みんなが楽しみにしている。(日央子)