狩猟ツアー特別版 手記

「鹿が掛かりました。小阪のくくり罠です」

1月14日朝一番に朗報が入った。この日は狩猟体験ツアーに参加する「南紀くろしお商工会青年部」の皆さんが色川を訪れる日。これで止め刺しから見て貰える。原裕くん、さすがである。

鳥獣被害の深刻さと、狩猟の一連の流れを体感して貰う目的で、NPO法人地域再生ネットワークが主催する「狩猟体験ツアー」を、特別に日帰りのメニューに組み直し(従来は2泊3日)開催。獣害専従協力隊である私と高嶋さんは取材も兼ねて、そのサポートに当たった。発端は商工会で発行する会報の取材と、協力隊の紹介を1コーナー設けて貰うことである。

当日は、円満地公園に7名が集合。談笑しながら受付を済ませ、早速捕獲された鹿の元へ。現地で鹿と対面した瞬間、今までの空気は一転し、張り詰めた緊張感が一面に漂う。これから始まるその言葉さえ知らなかった「止め刺し」が、目の前で行われ、ひとつの命が尽きる。しかし感傷に浸っている余裕は無い、次は解体作業が待っている。

解体作業では、特に内臓を出す工程は全員に体験して貰いたかった。直に触れ、その「体温」を感じて欲しいからだ。その場の空気感・温度・臭い・感触など、「体験」の本質がそこにある。

解体作業後、笠松の民家に移動し、鹿料理をご馳走になる。食欲が罪悪感を薄れさせていく。今しがた供養塔の前で手を合わせた時の想いとは相反する、可哀そうと美味しいの狭間で、「いただきます」の意味を噛み締めている様子だった。

このツアーを通じて、色川の魅力にもハマったようで、次は花見に来たい!と言いながら、色川を後にした。「今回の経験を経て、私たちも地域の未来を考え、獣害に向き合っていきたい」と会報は締められている。