ずい分と暖かい日が続いた10月も終わり、ようやく心地よい冷たさの風が吹き始めた立冬直前の11月1日、狩場刑部座衛門の例祭が樫原区の狩場刑部座衛門神社にて執り行われた。狩場刑部座衛門は今から約600年前、ひとつだたらと呼ばれる盗賊を退治し、恩賞として那智山から寺山三千町歩を与えられるが、それを色川郷18ヶ村に譲渡し、その恵みは末長く郷民の助けとなったと江戸時代に編纂された『紀伊続風土記』(紀州藩)や『熊野見聞記』(著者不明)にも記されている色川の伝説的英雄。
当日は井上百合子樫原区長はじめ住民と遺徳顕彰会会員により準備が進められ、記念碑前での式典には各区長の参列はじめ、熊野新聞からの取材も見えた。厳粛な催事の後は、綺麗に管理された境内で恒例 の餅ほりもあり賑わった。
この記念碑は今から約100年前の1918年(大正7年)に建立されたもの。その年に発足した狩場刑部座衛門遺徳顕彰会は、一時途絶えていたものの2002(平成14年)に復活。須川政明会長からは「続けていく事の大変さがある。若い世代がこうして関心を持ってくれる事は大変嬉しい」と参列した若い世代に言葉が向けられ、会員の浦勝良さんから史料をまとめたものも配られた。住民自体が減る中、こうした伝統を守り伝えていく大変さと、それでも続けていく気概が入り混じった慰霊祭が今年も無事に終わり、樫原の秋はふけていく。