各家を周り、軒先で、竹の先端にわら束をくくりつけて太くしたものを地面につきながら、亥の子唄を唄う。内容は、とにかくめでたいもの。その家が繁盛するように、いいことがあるように、前向きな願いが込められた祝いの唄でその家や住む人を祝福し、迎え入れた家は、お礼にお酒や食事を振る舞う。
11月16日の亥の日に、小阪区で久しぶりに亥の子祭りが行われた。唄い手の人数も、招き入れる家の数も年々減りつつある中、今年も無事に終えられたことを、参加者たちは「よかった、よかった」と喜び合った。
参加してみるとわかるのだが、亥の子祭りには醍醐味がある。それは、唄い手と招き入れる人たちで作られるなんとも言えない一体感。亥の子唄の低くゆっくりとした独特の節回し、「えらい、えらい」と言いながら暗闇の中をみんなで歩く感じ、そして一緒に飲むお酒…。実に気持ちよく酔っ払う。 「ご馳走を準備するのは、迎える側も大変…」という声もある。「歩くのがえらい」という声もある。それでも続ける理由があるとするならば、やっぱりあの「一体感」であり、「楽しさ」である気がした。残さねばならない、では年々プレッシャーが重くのしかかってくる。それぞれの「せっかくだからめでたい日をお祝いしよう」。そんな楽しめる気持ちの範囲内で、やり方や参加する人も工夫しながら続けられたら、小阪に住む一人として嬉しい。