弘法大師に祈る地域の安寧

大師講

弘法大師には、数々の伝説が残されている。そのひとつに、各地を訪ね歩いたお大師様が、道々、水脈を掘り当てては日照りに悩む民を救った、という話がある。小阪区で行われる「水大師」の起源だ。

伝わったのは明治後期ごろといわれ、例年2月20日に「大師講」、21日に「水大師」が行われる。「大師講」は、住民が集会所に集まり、お大師様の掛け軸に向かって祈るもの。念仏を唱えるのは、住民の有志「念仏講」のみなさん。念仏次第に沿って、ひとつひとつ丁寧に御詠歌や和讃などが唱えられた。

翌日は、寺の上にある水大師のやしろにて、参加者全員で身体健全、息災延命を祈願。その後、寺で恒例の餅ほりが行われた。色川の外からも多くの人が訪れ、祝い年の3人と住職が投げる餅を、楽しそうに拾い合っていた。

役を務める西浦正(ただし)さんは「おだやかで、気持ちのいい大師講だった。担い手が減り負担の大きい行事は、ない方がいいのでは、と思う時期もあった。しかし、区のまとまりや住民のつながりには、やっぱり必要だと実感している。次へつなぐ力になりたい」と力強く話されていた。

正さんの言葉は、念仏次第に記された「願わくば無明長夜の闇路を照らし、二仏中間の我等を導き給え」という弘法大師の宝号に重なり、区のこれからを照らす、一筋の光であるように感じられた。

大師講餅ほり