色川にお茶シーズン到来

4月末になると、色川のあちこちでみながお茶の仕事にとりかかり始める。どなたか取材させてもらえないかと、小阪をうろうろしていると、峯鈴子さんと松葉貞代さんが、お茶の作業の相談をしていた。

 峯さんは現在、和歌山市在住だが、ご主人の実家である小阪でお茶作りをしている。「主人の親が亡くなった13年前から、引き継いで、主人と2人でやり始めて。今は松葉さんに手伝ってもらって作っている」とのこと。取材を快諾していただき、早速翌日からお邪魔した。

 4月29日、朝集合し、小阪の県道の少し下にある茶畑へ。山並みが見える、とても見晴らしの良い場所だ。茶刈り機を使って、今日作業する分のお茶を刈る。袋持ちを手伝ったが、これも結構力がいる。刈ったお茶を一輪車に載せ、峯さん宅の作業場に運ぶ。

 作業場には茶葉が2キロまで入る釜炒り機と揉み機があった。自転車のパーツなどを使った手作り感のある機械だ。これは本宮の人に作ってもらったそう。茶葉を袋から出して、枝や虫などを取り除き、2キロずつ計量して、釜炒り機に入れ、7分炒る。その後、揉み機に移して15分揉む。

 揉みが終わったら、旦那さんお手製の干し機(木枠に細かい網を張ったもの)の上で茶葉をほぐして広げ、天日干しする。

 茶葉は先に干したものからだんだんと乾いて、色が濃くなってくる。それをひっくり返して干す、を3回。今度はビニールシートに移し替え、さらに天日干しを3日ほどする。この日はこれらの作業をひたすら繰り返した。

 5月1日、天日干しした茶葉の様子を見に行く。触って見るとパリパリに乾燥している。これを一旦袋へ入れておく。すべての茶葉を刈り、天日干しまでの工程を終えると、最後に再び釜炒り機で炒って完成する。

 5月7日、最後の釜炒り作業の日。ゆるい火で25分釜炒りする。完成したお茶から良い香りが漂う。これをふるいにかけ、袋詰めしてやっと完成だ。和歌山、大阪、名古屋などから注文があり、毎年完売とのこと。お茶を飲ませていただいたが、おいしく、ほっとする味だ。 「みなさんにおいしいお茶を届けたい。おいしいと言ってもらえるのがうれしい」。その思いで現在もお茶作りを続けている。ただ「後継者がいないのが困っているところ。引き継いでくれる人がいたら、1、2年作業を教えつつ一緒にできたら」と話す。お茶作りの全作業は10日間ほど。この後も、剪定や施肥など、年間を通して作業がある。身近な存在であるお茶ができるまでには、どれだけ人の手がかかっていることか。お米作りと同様、著者が色川に来て、感じたことである。

茶刈りの様子