みんなで播いた初めの一粒

 8月の勉強会から、本格的にスタートした棚田地域振興協議会の活動。色川内では初めてとなる取り組みが南平野区で始まった。

 同区が取り組むのは休耕田での小麦栽培。場所は県道から平野集落に分かれる三叉路の一帯。有志が集って稲作をしていたこともあるが、その後は除草のみしていた。

 朝晩、本格的に冷え込み始めた11月初旬の日曜。区内の有志10人ほどが集まって、種播きをした。前日に耕起した畑に、分業で筋をつけ、種を播き、土を被せる。まだ播種機もなく、すべて手作業。だが、6畝ほどの畑では「これくらいの労働がちょうど良い」という声も。面積はいずれ広げ、3年で輪作する予定。休期はレンゲなどの栽培も考えているという。小麦を選んだのも、冬の間、緑が賑やかで景観が良くなるという狙いもある。

 腰をかがめて一粒ずつ種を播く作業は骨が折れる。けれど、「みんなでやると早いね」「励みになるね」と言い合っている間に、全ての作業は1時間ほどで終わった。

 今季の収穫は、製粉して参加者に配布。その粉を使ったパン作りを家庭で楽しめる様、パン教室も計画している。販売、製品化なども考え得るが、まずはそれぞれが経験することから。これらの企画は全て、同法の予算で賄われる。

 他に、区民の酒井康幸さんのイチョウ畑に遊歩道を作り、訪れる人に紅葉を楽しんでもらう計画もある。

「わかやまの美しい棚田・段々畑(和歌山県棚田等保全連絡協議会)」に平成27年から認定されている南平野。自慢の見晴らしに、彩り豊かな里の暮らしが添えられる事になりそうだ。

12月中旬には、揃って麦踏みの予定。思いがギュッと詰まったパンが、各家庭の朝食を彩る日が待ち遠しい。 経済的な成果が問われがちな昨今だが、集落の景色が華やぎ、触れ合いの機会が増え、食卓に喜びが生まれる。暮らす人の幸福度向上は、振興への何よりの答えかもしれない。